







システムは先ほどの3つの指標 ― wbgt_streak、surge、early_flag ― をもとに、
その日の順化状態を自動的に判定します。
まず、順化進行中 の場合は、暑さに慣れてきており、搬送リスクが低下している状態です。
次に、順化崩壊 は、急な高温上昇によって慣れが崩れ、短期間にリスクが上昇している状態を示します。
最後に、順化不足(初期) は、梅雨明けや初夏期など、まだ暑さに慣れていない段階で、リスクが高い状態を意味します。
このようにして、日々の気象変化に応じた「慣れ」「崩壊」「不足」をリアルタイムで把握できます。
以上が、順化状態を自動的に判定する仕組みです。

説明変数は、WBGT(日積算・最大・最小・差分)、気温(最高・最低)、湿度(日平均)、それに日照時間や大気圧などです。
これらの気象要素を組み合わせることで、熱中症搬送件数の変動をより詳細に捉えることを目的としています。
目的変数は、「さいたま市の熱中症搬送件数(日単位)」です。
学習データは2010年から2024年までで、たとえば2010〜2017年で学習して2018年を再現する、という形で検証しました。
特に、2018年、2022年、2025年は、過去と比較して異常高温が多く見られ、それに伴い1日の搬送者数も最大で約50人に達しました,このような特徴から、これらの年は“異常年”と位置づけられます。
これらの年を対象に再現性を評価することで、モデルの汎用性や順化考慮の効果を確認しています。

まず上の図は、順化を考慮していないGLMの結果です。6月中旬に気温が上昇した時期では、実際の搬送者数に比べて予測値が低く、
モデルが初期の暑さへの反応を十分に再現できていません。一方、下の図は順化を考慮したGLMです。
同じく6月中旬の立ち上がりの部分で、実測の搬送人数に近い形で再現できており、初期の暑熱への慣れや順化不足が適切に反映されていることが分かります。

ここでは、LightGBM、CatBoost、GAM、CNN の4つのモデルを用いて2025年の搬送件数を再現した結果を示しています。
これらのモデルも波峰の形状自体は再現できていますが、いずれも大量の搬送時に低く見積もられました。
この実験を行う過程で2025のような温度異常年ではGLMモデルの方がより良い再現性を示しております。


異常高温による急激な増加を正確にとらえており、実測値に最も近い結果となりました。




二つ目に、重症度別の再現、つまり軽症・中等症・重症・死亡に分けてモデルを適用し、より適切な医療資源の配分につなげることを目指します。

