【全国初】埼玉県が「ヤングケアラー」の実態を調査しました。その結果は・・・

 

 皆さんは、「ヤングケアラー」という言葉をご存じでしょうか?

 “家族の介護や世話などを行う18歳未満の若者”を意味し、近年、その増加が深刻な社会問題になっています。

 こうした中、昨年、埼玉県が全国に先駆けて、県内の高校2年生55,772人を対象にアンケート調査を行ったところ、実に、25人に1人が「ヤングケアラー」に該当するとの結果が出ました。

【埼玉県が発表した調査結果】

・回答者48,261人のうち、「ヤングケアラー」該当者は4.1%、男女比は4:6
・被介護者は、「祖父母・曾祖父母」36.9%、「母」24.0% 、「兄弟姉妹・義兄弟姉妹」22.5% 、「父」11.1%
・ケア内容は、「家事(食事の用意・後片付け・洗濯・掃除など)」58.0%、「感情面のケア(その人のそばにいる・元気づける・話しかける・見守る・外に連れ出したりするなど)」41.0%(複数回答)
・ケア頻度は、「毎日」35.3%、「週2~3日」22.4% 、「週4~5日」15.8%
・ケアにかける時間は、平日が「1時間未満」40.4%、「1時間以上2時間未満」27.4%、休日が「1時間未満」26.8%、「1時間以上2時間未満」24.9%
・ケア理由は、「親が仕事で忙しい」29.7%、「親の病気や障害等のため」20.7% 、「ケアをしたいと自分で思ったため」19.1%

・学校生活への影響は、「なし」41.9%、「孤独を感じる」19.1% 、「ストレスを感じている」17.4% 、「勉強時間が充分に取れない」10.2%
・平日は、ケア時間が長くなるにしたがって、特に、「休みがち」「遅刻が多い」「勉強時間が充分に取れない」「成績不振」に増加傾向がみられ、休日については、「部活ができない」「友人と遊ぶことができない」「ストレスを感じる」に増加傾向がみられた

 「25人に1人」、つまり、平均すると「1クラスに1人から2人いる」ということです。

 この数字に対する感じ方は、その人が過ごしてきた環境によると思いますが、私は「こんなにも多いのか」と正直驚きました。高校生の頃を思い返してみても(10年ほど前ですが)、身近に「ヤングケアラー」に該当するような友人はいなかったからです。

 さらに言うと、アンケートに回答していない7,511人の中には、介護に負われ通学するのもままならない「ヤングケアラー」も含まれているでしょう。そうなると、実際には、この数字以上に多くの「ヤングケアラー」が存在することが推測できます。

 また、今回の調査で浮き彫りになったのは、多くの「ヤングケアラー」が「学校生活への影響はない」と回答していることです。

 高校生は特に多感な時期であるため、周囲に相談できないケースが多いようです。家庭内という閉ざされた空間では、ケアラー本人が周囲に相談しない限り、周囲がその人をケアラーであると認識することは困難です。

 多くの場合、高校生活というのは、友人と楽しい時間を過ごしたり、就職や受験など今後の人生についてじっくり考え始める時期だと思います。この時期に、家族の介護に負われるようでは、その後の人生に悪影響を及ぼしかねません。

 一昔前の大家族の時代であれば、家族や親戚、近所同士で支え合うこともできましたが、核家族化が進み、近所付き合いが減少した現在、こうして周囲の人が気づかないところで、未成年の子どもが抱える負担が増えたのだと思います。

 まず、私たちにできること。それは、「ヤングケアラー」への関心を深め、救いの手を差し伸べることです。

 もしかしたら、気づいていないだけで、私の身近にも「ヤングケアラー」がいたのかもしれません。その存在に気づくことができなければ、救いの手を差し伸べることもできません。

 法整備による経済的な支援は当然不可欠ですが、それ以上に、周囲の意識やサポートが、「ヤングケアラー」の子どもたちの心身の負担を和らげると思います。

 今回、埼玉県が実態調査に踏み切ったことは、多くの人に対して、彼らの存在を周知するきっかけになりました。また、NHKをはじめとする複数のメディアでもこの問題は取り上げられており、今後、更に注目が集まることが期待されます。
 「ヤングケアラー」自身が孤立することなく、周囲や行政の支援を受けながら、学校生活と介護を両立できる社会づくりが求められています。

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この記事を書いた人

佐藤 千春のアバター 佐藤 千春 県民公論記者

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(まだまだ駆け出しです・・・)

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